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「あのさ、佐藤君。放課後に時間あるかな?」
倉橋さんの質問に、心臓が激しく波打つ。
「大丈夫だよ」
帰宅部の僕に予定は少ない。バイトか親友の西宮と遊ぶくらいである。それだって、倉橋さんの予定なら、こっちが最優先だ。
「よかった! じゃあ、屋上に来てくれないかな? 教室だとちょっと話しにくいから」
「うん、わかった!」
……これってアレか? アレなのか?
放課後に人気のない屋上に呼び出されるなんて、告白イベント以外に思い浮かばない。
僕はこれ以上ないくらい舞い上がっていた。教室では西宮に、「何かいいことがあったのか?」と笑われてしまった。
生まれて初めての経験。
しゃべりたい気分を我慢して、僕は一日を過ごした。
そして、放課後の屋上。
昼休みにはそこそこ人がいるが、放課後は人影がない。入り口の扉を開けると、冷たい秋風がビュッと吹き込み、思わず身震いをした。倉橋さんは、落下防止用の高いフェンスのそばに立っていて、こちらに気付くと、にこりと笑みを浮かべた。
「来てくれてありがとう」
「う、うん、もちろんだよ」
告白の返事は、考えるまでもない。もちろんオッケーだ。
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