50パーセントの恋

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「そう! 西宮君って、いい人なんだよ! こないだだってね……」  紅潮した顔で、僕の知らないエピソードを語る倉橋さん。  彼女がどれだけ西宮のことが好きということは理解した。  僕の入る隙間が1ミリもないことも……。 「それでね。佐藤君にお願いしたいことがあるんだ」 「いいよ、何でも言って!」  半分やけになっていたかもしれないが、僕は努めて明るい声を出す。もう、これは敗北が確定した消化試合。結果は変わらない。早く終わらすべきだ。 「それで、何をすればいいのかな?」 「うん、西宮君に好きな人っているのか、聞いてもらいたいんだ。佐藤君、西宮君とすごく仲がいいから」 「ああ、そんなこと。お安いご用だよ」 「ありがとう! 佐藤君に相談してよかった。やっぱり、佐藤君はいい人だよね」  倉橋さんに微笑みかけられると、悔しいが胸が高鳴ってしまう。  彼女が僕を評するいい人は、西宮とは決定的に違う。永遠に好きな人にレベルアップすることはない。  だけどせめて、いい人のままで、彼女の思い出の1ページに残してもらいたい……ってのは、かっこつけすぎか。  彼女が去ってからも、僕はしばらく屋上のフェンスにもたれかかっていた。  あれ、おかしいな……。  急速にあたりの視界がぼやけて、頬に熱い物が流れてくる。    ……いやいや、まいったね。  あたりまえだが、失恋が初めてって訳じゃない。  ……というか、好きになった数だけ失恋してきた。  失恋のプロフェッショナルのつもりだった。  でも、今回のダメージはでかい。  彼女の前で泣かないのが、精一杯だった。    ***
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