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小声で話しかけられビクリと肩が跳ねる。
講義中なのだから声を抑えるのも、そして小声だからこそ顔が近付くのも当たり前なのだが……
そのキスしそうな距離感、に狼狽えた。
だって今付き合っているのだ。
ずっとただ駄弁ってきたこの唇と、私の唇が触れ重なる可能性があることを考えると、気恥ずかしくて堪らない。
(高校の時にも彼氏くらいいたのに!)
その彼氏とは出来たことが、トモ相手だと途端に焦ってしまうのは、やっぱり私の中で恋人としてではなく『友達』という印象が強いからなのかもしれないと思った。
「メグ、駅前のカフェ行かないか?」
「カフェ?」
(そういえば新作スイーツが出るんだっけ)
思わず逃げ出してしまう少し前にそんな話があったなと思い出す。
確かに、案外甘いものが好きなトモといつも新作スイーツは試しに通っていた。
けど。
「ごめん、先にえりなに誘われちゃってさぁ」
「ん、了解。また感想聞かせて」
嘘をついたせいか胸がチクリと痛む。
(けど、今は……)
なんだかこの距離感がしんどい今は、トモといるのか苦しくて。
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