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「も、もちろんいいよ」
何故か震えそうになるお箸に冷や汗をかきつつ、必死で鯖を取り分けた私はなるべく平静を装いながらそっとトモのお皿に乗せて。
「あーんしてくれても良かったのに」
「なっ!」
さらっとそんなことを言われてドクンと心臓が一際大きく跳ねた。
ぎょっとした顔をしてしまったのか、固まった私の表情を見たトモが何故かニッと頬を上げて。
「なに、意識した?」
くすりと笑いながらそんなことを言われ、ムッとしてしまう。
「したに決まってるでしょ!? だ、だって付き合ってるんだから……っ!」
思わずそう声を荒げた私は慌てて両手で口元を押さえた。
(何言ってんの私は!)
友達の時だってしたことがある。
ならば尚更、付き合いだした今も普通でないとおかしいのだ。
決して意識するようなレベルのことなんかじゃない。
じゃ、ない、のに。
「……これ、残りあげる」
「え、メグ?」
戸惑ったトモの声を背に食堂から飛び出した私は、何故だか無性に泣きたくて泣きたくて堪らない。
(こんなはずじゃなかったのに)
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