ハウニーコートの恋

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ハウニーコートの恋

 社交界に出て七年目となればそろそろ「売れ残り」だ。家に届く招待カードや贈り物が大幅に減り、代わりに友人たちの婚約の知らせと結婚式の招待カードばかり舞い込んでくる。  私もかつては素敵な出会いに心ときめかせた十九歳の乙女だったけれども、七年目になれば社交界の華になるどころか壁の華。 この国での適齢期を過ぎた今、自分より若い令嬢が以前の自分と同じように純粋で初心(うぶ)な顔で男性たちと話しているのを眺める立場だ。  七年で素敵な出会いはいくつかあったがどれも実を結ばず、今は結婚しなくとも親が失望しない程度の外面を整えようと資格の勉強に励んでいる。  その日も友人の婚約披露のパーティーだった。晴れ晴れとした笑顔の「彼女」とその婚約者にお祝いを述べ、その場にいた知人とも世間話をして別れたら、食べることしかやることがなくなった。  テーブル上の銀食器に盛られた美味しそうなフルーツをひらすら取っては食べるという単調極まりない作業を繰り返しているうち、近くに知った顔が来た。  会場の華やかな雰囲気に悪酔いしたのか、元々感情の読みにくい顔に渋みが加わっていた。しかし、知人の私を見つけるや、やっと居場所を見つけたとばかりに歩み寄ってきた。 「マティルダ嬢も来ていましたか」 「ごきげんよう。さきほどはお見掛けしませんでしたね」  私もひとりでやることがないので、フルーツを食べる手を止めて話に応じた。 「ついいましがた到着したもので。いなくともさして影響はないでしょう。彼らはお互いに夢中で、僕が来ていなかったことすら頭になかったようですから。結婚となると、みんな頭が馬鹿になるらしい」
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