強盗事件

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強盗事件

「まったく、井伏(いぶせ)。キミと一緒だと目立ってしょうがないな」  ため息と一緒に言葉を吐き出したのは、しかし言葉と裏腹に道行く女性――だけでなく男性までもーーが残らず振り返るほど美しい顔をした青年であった。 「あっ?何言ってんだ?街のヤツらがさっきから見てんのは俺じゃなく、ユキさんのほうだろ?」  呆れたようにユキと呼ばれた青年の隣を歩く男、井伏がいった。 「いや、いや、180を超える長身に、格闘家みたいな体つき、さらにナイフの如き鋭い眼光をした人間が目立たないはずないだろ?それに比べたらぼくなんて雀くらいありふれた、平凡な男だよ」  ユキがつらつら隣を歩く井伏の特徴を述べた。  刑事らしい、なかなかに的を得た人物評だが、より目立つのがどちらかと言えばやはりモデルのようなスタイルに輝くような容姿をしたユキのほうだろう。 「……マジで言ってるのか?マジならあんたは一度鏡をじっくり見るか、眼科に行ったほうがいい。あと身長なら俺より190近いユキさんのほうがデカいから目立つぞ」
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