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「たしかに身長はぼくのほうが高い、それは認めよう。だけど、容姿はキミのほうが目立つ。ここは譲れないな。大体なんだい、キミの今日の格好は?ジェイソン・ステイサムでもあるまいに、黒のジャンパーに黒のデニムパンツって」
服装にまで文句をつけてきたユキに今度は井伏のほうがため息を吐きたくなる。
「仕事中ならまだしもプライベートで俺がどんな格好をしていようと勝手だろ?いいじゃないか、動きやすいし汚れも目立たないから気に入ってるんだ」
「キミのコワい顔に黒ずくめの格好を併せると威嚇効果があり過ぎる、と言ってるんだ。それじゃ女の子に怖がられてモテないぞ?」
などとユキは言うが、井伏の顔立ちは十分整っているし、そのワイルドな雰囲気も署内の女性たちからは『男らしい』と概ね好評である。
「まさかファッションチェックをするために非番の俺を呼び出したのか?」
ユキの言葉などまるで気にした風もなく井伏が言った。
「そんなわけないだろ。井伏を呼び出したのは、ウチの部署に配属されたばかりの後輩にいい店を紹介したいと思ったからさ」
「いい店、ねぇ?」
井伏は胡乱な目をユキに向ける。
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