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何にも執着しなさそうなユキの意外な熱心さに井伏は内心で驚く。
「だけど、連れて行ったヤツみんなが店の常連になるわけじゃないだろ?」
「その通り。過去に男女20人近く連れて行ったけど、ハマったのは2人しか居なかった」
「なら俺も今日の一回しか行かないかもしれないぞ?悪いが音楽にあまり興味がないんだ」
「構わないよ。趣味なんて強制するもんじゃないからね。だけど聴けば好きになるかもしれない。ま、普及活動なんてその可能性に期待するだけさ。それ以上やれば野暮になる」
「ん、わかった。最初から否定するのもなんだしな。ユキさんがそこまで言うなら、聴いてみるか」
「ありがとう。そう言って貰えて嬉しいよ」
ユキがそう言った時だ。
リリリリッッ……!!
2人の進行方向からくぐもったベルの音が聞こえてきた。
雑多な音が響き渡る繁華街のこととはいえ、これは普通聴くことのない、切羽詰まった雰囲気を醸し出す音だった。
つまり警報音。近くで事件が起きたらしい。
街を行く人々は立ち止まり、不安気な様子で辺りを見渡す。
周りの人間がオロオロする中、2人の刑事の反応は早かった。
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