強盗事件

4/11

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
 何にも執着しなさそうなユキの意外な熱心さに井伏は内心で驚く。 「だけど、連れて行ったヤツみんなが店の常連になるわけじゃないだろ?」 「その通り。過去に男女20人近く連れて行ったけど、ハマったのは2人しか居なかった」 「なら俺も今日の一回しか行かないかもしれないぞ?悪いが音楽にあまり興味がないんだ」 「構わないよ。趣味なんて強制するもんじゃないからね。だけど聴けば好きになるかもしれない。ま、普及活動なんてその可能性に期待するだけさ。それ以上やれば野暮になる」 「ん、わかった。最初から否定するのもなんだしな。ユキさんがそこまで言うなら、聴いてみるか」 「ありがとう。そう言って貰えて嬉しいよ」  ユキがそう言った時だ。  リリリリッッ……!!  2人の進行方向からくぐもったベルの音が聞こえてきた。  雑多な音が響き渡る繁華街のこととはいえ、これは普通聴くことのない、切羽詰まった雰囲気を醸し出す音だった。  つまり警報音。近くで事件が起きたらしい。  街を行く人々は立ち止まり、不安気な様子で辺りを見渡す。  周りの人間がオロオロする中、2人の刑事の反応は早かった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加