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弾かれたように現場へ向かい、駆け出していた。
「応援を呼ばなくていいのか、ユキさん?」
走りながら井伏が問う。
「警察が現場に着くまでの平均時間は8分。世界的に見ても優秀な数字だが、それだけあれば犯罪者に人を殺せる隙と逃げる隙、二つの好機与えることになる。でも、ぼくたち2人ならそんな好機を与えることなく犯罪者どもを捕らえることが出来る。ならば、どうするかなんて考えるまでもない。やるんだ、ぼくたちで」
「了解、先輩。わかりやすくてありがたいぜ」
ユキの答えに井伏は肉食獣を思わせる笑みを浮かべると加速を始める。
「キミも理解が早くていい」
それにユキは優雅な笑みを返しながら井伏に合わせスピードをあげた。
しかし、である。
本来なら2人は応援を呼ぶべきであった。何故なら『市民に一切の被害を出さず、犯人を捕らえる』ことこそが刑事にとっての最重要事項だからだ。
応援を呼ぶ暇がない。そういう場合もあるだろうが、今違う。少なくとも現場と思しき場所へ向かう前に応援要請をすべきだった。
無論、2人にもそれはわかっていた。わかっていながら現場に急ぐことを選択した。
どうしようもない不良刑事たちである。
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