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「ここだな」
井伏が呟く。現場は2人が警報を聴いた場所から20メートルほど先にあった宝飾店であった。
2人はこっそり中の様子を伺う。
店内には時計や宝石の入ったガラスケースをバールで叩き割り、中を物色する3人の男が居た。
全員黒っぽい服装に目出し帽をかぶっている。白昼だというのに慌てる様子もなく平然と犯行を犯している。
犯罪の基本はいかに人に見られないようするかである。何故なら見られれば、それだけ捕まるリスクが増えるからだ。
なのに全く気にしないというのは、大胆というより。
「アホだな。こいつら」
呆れたように井伏が言った。
「今更だね。そもそも犯罪に手を出した時点で頭の程度なんて、たかが知れてるだろう?それより、井伏……ここは任せていいな?」
「もちろん」
それで話は決まった。ユキは店から離れ、悠然と歩きながら近くに路駐しているワンボックスカーへ近づいて行く。
「さて、俺も行くか」
井伏はドアを開ける。すると鮮明なベルの音が鼓膜を振動させた。
男たちの視線が一斉に井伏の方を向く。
「なんだ、てめえ!」
男たちの1人が叫ぶ。
その時すでに井伏は疾風のように店内へと駆け込み、手近に居た男へ迫っていた。
「なっ!?」
男は驚愕の声を上げたのと井伏の拳が男のこめかみに叩き込まれたのは同時だった。
「グェッ!?」
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