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抵抗する間もなく、男は悲鳴をあげ気を失った。
正確に打ち込まれたこめかみへの打撃は相手の脳を頭蓋へ叩きつけ、一瞬で意識を刈りとることができるのだ。
「こ、この！」
井伏の背後から別の男がバールを振りかぶりながら襲いかかる。
しかし、井伏はそれを気配で察知していたらしい。
「セイっ!」
振り向くことなく、裂帛の気合いと共に後ろ蹴りを放つ。
「ぐぁっ！」
もろに井伏の蹴りを喰らった相手はまるで爆風に巻き込まれたかのように吹き飛ばされ、床に後頭部を強かに打ち付け気を失った。
「く、来るなっ！」
残った1人は一瞬で仲間を失ったことによる恐怖でパニックを起こしたらしく、出鱈目にバールを振り回しながら井伏に向かってくる。
危険な状況である。
だが、訓練を積み、経験を重ねた歴戦の猛者である井伏には脅威でもなんでもない。
大振りのバールを容易く掻い潜り背後に立つと右腕を相手の首に回し左手で右の上腕を掴み締め上げる。
裸絞、という技だ。
この技は決まると格闘のプロでも脱出するのは困難だという。ましてやこの相手は素人なのだ。
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