わたしの世界が、ちょっぴり変わった

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 頭をかきながら、わたしが照れたような表情を浮かべていると、流星がコートの中から怒鳴った。 「よし! 新生日咲! おまえにオレの『命』をひとつ、分けてやる。中に入ってこい。ガンガン当ててやれ!」 「え……」 「ほら! 早くこい!」  流星の言葉は絶対だ。  意気揚々とは程遠く、わたしは、オドオドとコートの中へ移っていく。 「ほら。さっきみたいに狙っていけよ!」  わたしは、流星にボールを手渡された。  流星が指さす先は相手チームのボスで、普段は流星の側近男子だ。  気が荒くて力持ち。  いまも、ニヤニヤとした笑みを浮かべて、わたしを見る。 「ほら、日咲!」  でも大丈夫。  もう、いままでとは違うわたしだもの!  わたしは、覚悟を決める。  狙いを定めて大きく振りかぶった。 「えい!」  わたしの投げたボールは、側近男子のど真ん中のお腹に命中する。  けれど、当然ながら、そのままがっしりとボールを抱えこまれた。 「――あ」  ニタリと邪悪に笑った側近男子は、すぐさま、わたしを狙ってボールを放つ。 「きゃあ!」  逃げ切れず、悲鳴をあげて後ろに転んだわたしの足に、ボールが当たって大きく跳ねあがった。  そのボールを、流星が飛びついて受けとめる。 「ひーなーたー? おまえ、なにやってんだよ!」  怒りの表情で目を細め、流星が転がるわたしへ詰め寄った。  そんなことを言っても……。  だって、利き手で投げてコントロールがよくなっても、もともと運動神経は鈍いから、逃げ切れないんだもの!  なんてことは、ガキ大将には怖くて口にだして言えなくて。  頭をかきながら、わたしは流星に、情けない表情を浮かべてみせたのだった。 おわり
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