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わたしは、とくにいじめられているわけではない。
流星は、勉強は良くも悪くもないが、運動神経が飛びぬけていい。
ちょっと目つきが鋭くて野生児っぽいけれど、よく見たらカッコいいと女子のあいだで評判の男子だ。
五年生の中では、女子も男子も逆らえない威圧感があるリーダー格――ガキ大将となる。
そんな五年生はみんな、男女ともに仲がいい。
休み時間は、ほぼクラス全員でドッジボールをしている。
三十人ほどのクラス内でふたつに分かれて、「日」という字のコートで中の人にボールを当てる、あのドッジボールだ。
ドッジボールでは「命」がひとりにひとつ与えられる。
そして、この小学校の特別ルールで、ボールを当てると、この「命」が当てられた人から当てた人へ移動する。
当然、ドッジボールに強い子はいくつも「命」を持つし、数が増減しない「命」であるため、何日も何週間も、休み時間ごとにドッジボールは継続されていく。
ドッジボールが終わるときは、「命」が片方のチームへ全部移るか、さすがにみんなが飽きてきて「そろそろドロケイにしようぜ」と声があがったときだ。
わたしは今日の昼休み、同じチームである流星からの外へのパスボールを受けそこねて弾き、相手チームにボールを渡してしまったのだ。
そのせいで、境界線ぎりぎりにいた流星が速攻で当てられ、四個持っていた「命」が三個に減ってしまった。
流星は、そのことを怒っているのだろう。
「仕方がないよ。わたし、ボール球技って、本当に苦手だから」
「それでも、流星のあんな言い方ってないよね。髪を引っ張るなんてひどい!」
「あ……。でもびっくりしただけ。痛くなかったし」
そう言って、わたしと早智は、ふたたび廊下を歩きだした。
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