今日だけは雨、降ってください

　山野さんとは課は違えど同期だ。
　入社式の日に一目惚れし、３年経った今、時々だが話すこともある。
　が、所詮僕の片思い。
　彼女は可愛くて明るくて人気があり、彼女を狙っている男性社員は少なくないだろう。
　今のところ、山野さんに彼氏がいるという話は聞いたことが無いが…。

　その山野さんが僕の部屋に来る…！

　そんなわけで急遽課長に休暇を申し出た。
　山野さんには僕の携帯番号と、最寄駅から家までの地図を書いた紙を渡した。
　そして昨夜は今日の分の仕事をするために残業することになった…。

　朝６時半に起きて、掃除と洗濯。
　古いアパートなので、壁が薄く、掃除の際は気を遣わねばならない。
　まぁ、このアパートの住人は大体が日勤の単身者なのでボチボチ起きてはいるだろうが。

　天気は微妙な曇り空ではあるが、降水確率３０％。
　山野さんが帰るまで、布団は外に干しておいて大丈夫だろう。
　下心があるわけではないが、余計な想像をしてしまうアイテムは目につかないところに置いておくのが無難だ。

　でも、雰囲気が良ければ告白…なんて出来るならしてみたいが、『時々喋れる』というささやかな幸せを壊すような勇気はない。