第1話 おねえちゃんだから

1/3
前へ
/338ページ
次へ

第1話 おねえちゃんだから

「おかあさん、大っ嫌い!!」  言っちゃった。  言いたく……なかったのに。  あたしは、おかあさんに言ってから……返事を聞きたくなくて、お店から出て行った。  水乃(みずの)町のパン屋、『ルーブル』。そこがあたし、水城(みずき)桜乃(さくの)のお家。  おじいちゃんが最初だってしか、あたしはよくわかんないけど。おとうさんがてんちょーさんになっても、お客さんはたくさん来るんだ。  あたしは、学校から帰って……お店を手伝うのをがんばるのが今年からのもくひょー。  しょーらい、パン屋さんになるのが……あたしの夢なんだ。  なんだけど。 「……あたしのバカ」  夢とかもくひょーがあったんだけど。  学校に入学して、二年目になった今年で……変わったことが出来た。  あたしに、弟が出来たの。  小さな小さな赤ちゃん。  可愛くて……ちっちゃくて、あたしの大事な弟なのに。  おかあさんが……ずっとずっと一緒なのが、あたしにとって寂しかった。  弟……宙太(そらた)は、赤ちゃんだからおかあさんがいなくちゃいけないのは、わかっているのに。
/338ページ

最初のコメントを投稿しよう!

120人が本棚に入れています
本棚に追加