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『三問目は、アが正しい選択肢だよ』
よしよし、アだな。次は?
『えーと、これはイと見せかけてエが正解』
イに見せかける引っかけにすら、俺は気付けないよ。
マジ、耕平がいてくれて助かるよ。
『大したことじゃないよ。僕だって、公平のお陰でこうして人と話せているんだからさ』
これからもよろしくな、相棒。
『ふふ、照れるな。ああ、よろしくね。さて次の問題は……』
二つ目の奇跡が起きたのは、席替えのあった次の日。相変わらず、まるで頭に入ってこない授業をBGMに隣に座る美希から漂う、ほんのり香るシャンプーの匂いに集中していた時だった。
「馬込、馬込公平、聞こえているか?」
「へっ?」
「へっ、じゃない。ペリーが来航した場所はどこかと聞いているんだ」
ペリー? なんか聞いたことはある名前だけれど。外人だよな。ってことは、やっぱり羽田か成田。いやでも、大阪の方ってこともありえるよな。
『浦賀だよ』
「えっ」
「どうした、早く答えろ」
「う、浦賀?」
「なんだ、馬込。お前も少しはやる気になったのか。正解正解大正解だ」
普段答えられない俺が正解を答えたことで、先生は機嫌良さそうに再びまったくわからない授業を続けた。
さっきの声はなんだったのだろう。答えを教えてくれたなら、俺に害を為すものではないのだろう。
もしや、俺の中に隠された能力を持つ人格が存在するのか?
疑問ばかりが膨らんで、俺は休み時間になるとダッシュで人気のない階段の踊り場に向かった。
「おい、さっきの声はなんなんだよ」
待てど暮らせどなんの反応もない。気のせいだったのだろうか? いや、それは絶対にない、断言できる。なぜなら俺は、ペリーが浦賀に来たなんてことは知らなかったのだから。
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