最強の味方

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 何かのアニメや漫画のように、発動条件や制約みたいなものがあるのだろうか。皆目検討がつかないまま、俺は自分の席に戻ることにした。  席について、水筒に入れてきた麦茶を飲んでいると、隣の席から声がかけられた。 「馬込くんがちゃんと答えたから、先生機嫌良くなって、いつもの小言がない授業になって感謝だよ」  えっと、馬込くんって言っているから、俺に対して話しかけてくれているんだよな。が俺に話しかけてくれているんだよな。 「いや、たまたまだよ」 「そうなの? でも、ありがと」  笑顔。美希が俺だけに向けてくれた笑顔。俺の目にカメラ機能か録画機能があれば、ヘビーローテーションで再生しまくるだろう。  そうか、勉強ができるとこんなメリットがあるのか。かといって、勉強なんて絶対にやりたくない。うーん、こういうのを葛藤というのだろうな。 『葛藤なんて難しい言葉を知ってるんだね』  さっきの声だ。思わず周囲を見渡すが、特に変わった様子は見てとれない。 『周りを見渡しても僕は見えないよ』  お前は誰なんだ?  声には出さず、頭の中で語りかけてみた。 『僕は中野耕平(なかのこうへい)。わかりやすく言うと幽霊ってとこかな』 「幽霊?」 「どうした、馬込。なにか質問か?」 「あっ、いえ、すいません」  危なかった、いろいろあって授業が始まっていたことにまた気が付かなかった。
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