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例えば、算数の発展問題と向き合ったとする。
ぼく──雨宮かいとはこれまでに習った公式と知識を総動員して問に取り組み、ああじゃないこうじゃないと数時間悩んだ末、ようやく「これかな?」と思しき解決の糸口を発見する。ただ、そこで、どこからともなく声が聞こえるのだ。
本当に、その解き方は正しいのか? と。
それにより、直前まで十割だったぼくの確信は八割にまで減って、残りの二割のために一歩を踏み出す勇気を奪われ、あまつさえ恐れの感情を付け足されてしまう。
そんなもの「ぼくは正しいんだ」って強い意志を持って忘れてしまえば楽なんだろうけれど、一度耳にしてしまった以上、意識せずにはいられない。実にめんどくさい、ありがたい教えだった。
ともあれ。
そんな期待と不安の揺らめきが、今朝、ベッドの上で目覚めたぼくの胸にずしんと宿ったのである。
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