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息を殺してしばらく眺めていたけれど、ロンさんに肩をつつかれて工房の外へ出る。
まだ、どきどきしている。
師匠が。花火を。
どうしよう。うれしい。師匠の花火が、観られる……!
「っはー!」
ロンさんが大げさに深呼吸をして、へなへなとしゃがみ込んだ。
それから、顔を上げずに、言った。
「お前、すごいよ。俺じゃできなかったことをやってのけた」
***
あっという間に花火大会の当日を迎えた。
国じゅうの花火師が一堂に会する様子はなかなかで、わたしは見事に浮いていた。じろじろと向けられる好奇のまなざしは、女の花火師が異質であることを否応なしに伝えてくる。
ばしっ、とロンさんが背中を叩いてきた。
「いったーっ! 何するんですか!」
「お前のことなんか誰も見ていねぇっつーの。師匠が復帰したから注目されてるんだよ」
「はっ。どうしてわたしの考えてることが分かったんですか」
「顔に書いてある」
ロンさんと視線が合う。
ふしぎだ。最初の頃は、すっごく犬猿の仲だったというのに、今はこうして気にかけてもらっている。
「俺たちができるのは、堂々とすることだけだ」
「そうですね」
大きく頷いて応える。
わたしがびびっていたら、師匠の評価だって下がってしまう。
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