第三話 花火大会

5/10
前へ
/25ページ
次へ
 少し前を歩く師匠の背中は、大きくて、広い。  この場所でいちばんすごいのは、紛れもなくこのひとなのだ。 「……どうした?」  わたしたちがついてこないことに気づいたらしい師匠が振り返った。 「いえ、何でもありません」  ロンさんが先に師匠へと近寄っていく。わたしも小走りで後に続いた。 ***  打ち上げる順番は大会側に決められている。  それまでに花火を設置しておけば、あとは自由時間。見物客向けに食べ物などの屋台が並んでいるらしく、皆で冷やかしに行こうという話をしていた。  ……の、だけど。  ロンさんとわたしが小玉を設置していると、違和感に気づいた。  師匠の手が止まっていたのだ。  久しぶりだから緊張する、なんてことはないだろう。わたしはそっと師匠に近づいた。 「師匠?」  顔を覗き込むと、わずかに表情が曇っている。 「どうしたんですか?」 「打ち上げ台が壊れている」 「えっ」  わたしと師匠が喋っていることに気づいたロンさんも近寄ってきた。  そして、打ち上げ台へ視線をすべらせて、眉間に皺を寄せる。 「もしかして、壊れてるんですか」
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加