第三話 花火大会

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 今さらひとつふたつ増えたってどうってことは、ない。 「アタシだって、アズマの花火は観たいもの」  ……だけど。  ……でも。  ごくり、とつばを飲み込む。 「いえ、大丈夫です。間に合わせてみせます」  わたしははっきりと口にしていた。 「あら、そう? 残念ね」  サマンサさんはあっさりと引き下がった。 「頑張ってちょうだい。必ず、アズマの花火を空へ咲かせてね♪」  そのまま空高く飛び去ってしまう。  同時に、わたしは工房へと戻ってきた。  裏側へ回り込んで打ち上げ台を覗き込む。師匠が示していた部品を確認して、腕を突っ込んだ。  手の中に滑り落ちたことを感触で確かめて立ち上がる。 「よし、……っ!」  気合を入れ直して、わたしは走ってきた道へと駆け出す。 ***  夜空に咲くのは、ロンさんの花火。  黄色の小さな花がたくさん。迫力はなくても繊細。そして、黄色が消える頃に、赤や青、いろんな色がきらきらと煌めく。 「本人の性格とは真逆の作品ですね」 「あぁ? 何か言ったか?」  次は、わたしの番だ。 『光よ、光。空を彩る花を咲かせよ!』  打ち上がるのは、最初に作ったのと同じ、赤い花。だけどできる限り大きく咲くように工夫した。蕾から、大きく花開くようにと。
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