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「いつも言ってるだろう。花火師は男にしかできない仕事なんだ」
「そんなのやってみなきゃ分かんないですよ」
頬を膨らませて応じる。
わたしたちは、花火師のたまごだ。
花火というのは『魔法星』を特殊な器に詰めて作る芸術。それを空に放ち開放することで、色とりどりの花を描くことができる、この国が誇る文化のひとつだ。
「女には向いてないから、誰もいないんだよ」
「うわっ。差別反対ー!」
譲らず睨み合っていると、のそりのそりと、熊のような大男が現れた。
「お前ら、またやり合ってんのか」
紺色のつなぎを着たこの人こそ、我らの師匠アズマさんだ。
隣国のお抱え花火師だった時期もある、天才花火師。
年齢は40歳前後だと聞いている。髪は真っ白で瞳は紫色。
ぼそぼそとした喋り方に、ようやく慣れてきたところだ。
「師匠。どうしてこんなちんちくりんを弟子にしたんですか」
「ちんちくりんって何ですか。わたしにはサラという立派な名前があるんですー」
身長が低いせいで幼く見られがちだけど、わたしは今年で15歳になるのだ。
くるくるとした金髪に、濃いピンク色の瞳。容姿は可もなく不可もないと思っている。
「俺はお前を絶対に認めないからな」
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