あの日海岸で凍えながら語り合った君へ

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*******  大学三年生だった俺は、学校とバイトとサークル活動と友達付き合いに忙しく、一昔前の表現で言えば、リア充だった。  親のおかげで顔面はそこそこ良く、海の側で育った為、健康的に日焼けした肌まで持っていた。お坊ちゃんだったわけではないが、共働き家庭で平均を上回る収入があり夫婦仲が良く、三つ上の姉とも仲が良かった。育った環境として足りないと思うものは無かった。  それでも、学生にありがちな将来に対する漠然とした不安が当時はあった。何になればいいのか分からないまま大学へ入り、あっという間に三年が経ち、半年後には就職活動が迫っていた。  父親のように、大手ではないが地元の優良企業で家族を満足に養える収入を得て、心身を壊すような苦労はせず、健康的に年を重ねていく。それが理想だったし目標でもあった。しかし、これが現役の大学生の目標だとしたら随分と手近なところで間に合わせたものになる。もっと熱意や夢、使命感を持って世に出るべきではないか?一応青年らしく、あの頃はそんな自問自答を繰り返していた。
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