あの日海岸で凍えながら語り合った君へ

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 新しく買った数学の問題集をリュックに入れ、白いパーカーの上にロゴが剥げたえんじ色のナイロンの上着を羽織り、家を出て坂を自転車で降りた。  浜風に押し戻されるような抵抗を受け、潮の香りを嗅ぎながら、ペダルを漕ぐ。視界が徐々に青で埋め尽くされていく。もう十一月だが、今日は気温が高めで暖かい。  歩けばザリッと砂の音がするコンクリートの駐輪場に自転車を停め、チェーンをかける。リュックを持ってヒップホップダンスの練習をしているグループの横を通り抜け、海岸へ出た。ゴミが比較的少ない場所を探し、砂浜に腰を下ろした。
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