あの日海岸で凍えながら語り合った君へ

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 堤防にたどり着くまでの間、その子はゆっくりと又反対方向へ向かっていた。すぐ側まで行くと、息が切れたまま俺は声をかけた。 「ハァ……ハァ、あ、あの、よ、良かったら話しませんか?」 「…………?」  怪訝な表情で固まってしまった。無理もない。 「あ、怪しいものじゃなくて…えっ、えぇっと、近所に住んでて、ここは庭みたいなもんで、よく知らない人に話かけるんです。言っときますが、ナンパじゃないですよ」  本当のことを言っているが、怪し過ぎる。 「……い、いいです」  視線が交わることなく、前を通り過ぎようとした時、俺は自然に彼女の二の腕を掴んだ。 「待って。歩くの大変でしょ?」
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