はらぺこな君へ

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それから毎日、アオイ君のおにぎりを作って持っていった。 アオイ君は2個のおにぎりをあっという間に平らげて、授業中はやっぱり寝ていた。 おにぎりがあるから早弁せずに、お昼にちゃんとお弁当を食べていた。 もうお腹は鳴らなくなっていた。 アオイ君は「大変じゃないの?」とか「金払おうか」とか言ってくれて結構気を使う人だという意外な事実もわかった。 「いーのいーの!私も楽しいし!」 そんな風に返事をした私は本当に楽しんでいた。何よりアオイ君が食べてくれることが嬉しかった。 だからはしゃぎ過ぎていろんな感覚が欠落していたみたい。 ある朝 その日もリュックにはアオイ君のおにぎりが入っていた。 私が教室の前に着くとアオイ君と奥野君の周りに男子が数人いて、奥野君の声が聞こえてきた。 「なー、アオイってなんでいつも立花におにぎり貰ってんのー?」 「それ俺も思ってたわ。お前ら付き合ってんの?」 他の男子の声もした。 え、なんでそうなるの? てか、おにぎりのことみんな知ってるんだ。 そりゃそうか。いつも教室で渡して教室で食べてるし。 「違うよ。俺の腹がいつも鳴ってるから…」 アオイ君の声がした。 教室入りにくすぎる。思わず一歩下がった。 「でも立花はアオイのこと好きだよな、絶対。」 「違うって、ついでって言ってたし」 アオイ君の声はめんどくさそうになっていた。 もう帰ろうかな? するとまた奥野君の声が聞こえた。 「てかさー、おまえよく他人が握ったおにぎり食えるねー。」 「それな、オレ、オカンのでギリ」 他の人も言う。 「別に食えるよ。お前らが潔癖すぎるんだよ。」 アオイ君が言った。 私は教室へ入らず、とりあえず一度トイレへ向かった。 リュックに入ったおにぎりがとても重たく感じた。
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