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アオイ君は私の手からホチキスを取るとその手を持ち上げてじっと見た。
そして、チュッと音を立てて私の指にキスをした。
突然のことで訳がわからない。
チュッて音、リアルで初めて聞いたかも。
それはアオイ君自身にも予想外の行動だったみたいで、ハッとした顔をして、私の手を握り直すとそのまま小指の付け根に噛み付いた。
「痛っ!」
思わず声が出た。
そんな私を見てなぜか笑ったアオイ君。
「オレお前の手、食えるよ。」
「はっ?手は…食べないで欲しい。」
そう答えると、アオイ君はまたククッと笑った。
「いや食わんけど、だからさ、またおにぎり作ってよ。」
私の手を握ったまま言った。
「わかった。」
恥ずかしくなって俯いて答えた。でも…
「でも無理しないでね。嫌なら言ってね?」
「だから嫌じゃないって。」
「だって最初の日、食べてから一瞬固まってたじゃん!」
アオイ君はピンとこない感じでしばらく考えてから言った。
「実は、梅干しだけ苦手。」
「そうなの?言ってよ!」
「だってさー」
そう言って視線を大きく逸らしたアオイ君は恥ずかしそうに言った。
「梅干し食べられないとか、子供っぽくない?」
何それ。今度は私が笑った。
「そんなこと思わないよ。もしかしてわさびとかもダメ?」
「無理。つける意味がわからん。」
「私も実は苦手ー!」
二人して笑った。
「じゃあ…これからも、おにぎりよろしくお願いします。」
「はい、また明日から作ってきます。」
お互いなぜか姿勢を正した。
「これもお願いします。」
ホチキスとプリントをこちらへ滑らせたアオイ君。
「それはアオイ君がちゃんとやってください。」
ー♡→
←♡ー
END
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