はらぺこな君へ

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入学してひと月たった教室は、少しずつ落ち着いていき、クラスの人物相関図も完成されつつあった。 私、立花ナツの矢印は隣の席の尾関アオイ君に向いている。 矢印にはハートマークとかではなくて…『気にしている』の説明だけ。だと思う。 一方、尾関アオイ君の矢印は…どこにも向いていない。 彼の前の席の奥野君からは彼に矢印が向かっていて『慕っている』って感じ。 アオイ君は奥野君が一方的に話しかけない限り誰とも話していない気がする。 アオイ君はクラスで一番窓側の席で、 ずーーっと机に伏して寝ていて、 そして… “グゥーーーっ” いつもお腹が鳴っている。 それが、彼を『気にしている』理由の一つ。 奥野君は何も言わないし、私にしか聞こえていないんだと思う。 初めの頃は本人も多少気にする様子があって、お腹が鳴ると同時に咳払いしたり、姿勢を直したりしていたけど、そのうち何もしなくなった。 それは誰にも気づかれていないと思っているのかもしれないし、「聞こえたとしてコイツ(私)だけだろ」と開き直っているのかもしれない。 アオイ君はお腹が鳴っているだけあって早弁する。 大体2時間目か、3時間目が終わるとお弁当を食べて、昼休みは寝ているか、奥野君の一方的な話を聞いていた。 そして、5、6時間目にはまた、お腹が鳴っている。 ここまで毎日鳴ってるともう、私が聞こえないふりとか無理があるよね。
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