雨よ、ふれ

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 今どきの子はお礼も言えないのか。  美奈代は小さくため息をつき、窓へ視線を移す。  さっきより雨が小さくなっている。  美奈代の会社の最寄り駅は次。  着くころには止んでしまうだろうか。  美奈代は、少し寂しく感じる。 「5分なら、まだ、降っているかな。うん、きっと降っている」  男の子は、独り言のように言ったあと、美奈代の方へ顔を向け、美奈代もなんとなく男の子を横目で確認する。 「おねぇさん。間に合いそうです。ありがとうございます」  男の子はにっこりと笑い、窓の外を嬉しそうに見ている。  なんだ、お礼ちゃんと言えるじゃない。  5分後、普通は止んでてほしいと願うはずなのに、「きっと、降っている」って笑っていた。    雨が好きなのだろうか?  それとも。  まぁ、自分には関係ない。  きっと明日の自分にとっての影響なんて、なにひとつない。  5分後、電車は無事に駅に着き、ドアが開く。  降りる人も多い上に、これから乗ってくる人も多い。  降りても、ここにとどまっていても地獄だ。  美奈代は、流れに身をまかせながら降りようとするが、あの男の子が人混みに飲み込まれそうになっていた。 「つかまって」  気づいたら美奈代は、そう告げて、男の子の手を取っていた。  どうでもいいのに、なぜか、手が、声が、勝手に動いた。    
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