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「お兄ちゃん?夕飯だよ?」
ドアをノックする。翔也の部屋は私の部屋の隣。壁一枚隔てた空間に恋した相手が居るとドキドキが止まらなくなる。即ち毎日ドキドキさせられる。
「お兄ちゃんてば!」
返事が無い時は寝てるかヘッドフォンでアニソンを聴いてるかだ。翔也はよく、お気に入りのアニソンやアニメを布教してくる。正直アニメに興味は無いが、想い人の好きな物を共有したいと思うのは当然の話だろう。だから私は興味のある振りをして話を合わせる。
「開けるからね!断ったからね!?」
返事の無いままドアを開けると、やはりアニソンを聴いていた。足でリズムを刻んでいるのがその証だ。
「お兄ちゃん!」
「わっ!?何だよ!?ノックしろよな」
「したよ!お兄ちゃんが聴こえないだけじゃん。ご飯だってお母さん呼んでる」
「あー。わかったわかった。すぐ行くから」
アニソン鑑賞を邪魔されたのが気に入らないのか、私の背中を押して追い出そうとする。足を踏ん張り抵抗するも力負けしてしまった。その力強さに男性を再認識してしまう。
「いっそ押し倒してくれたりしないかな……」
そう呟き口を手で塞いだ。聞かれでもしたら大変だ。
※
夕飯を終え、入浴の用意をしながら私は翔也と一緒に入る妄想をする。無意識に下腹部を指で慰め漏れそうな声を我慢した。
「美羅?母さんが早く風呂に入れってよ」
「ひゃっ!」
ノックと翔也の声に驚き、奇妙な悲鳴が出てしまった。危ない危ない。私って欲求不満なのかな。
「今から入るよ」
そう答え、着替えの下着とパジャマを抱え部屋を出ると翔也が居た。
「何?」
「いや、『ひゃっ』なんて変な声出すから何かと思ってな。具合が悪いとかじゃないよな?」
「ちょっと驚いただけよ!何でもない!」
顔が熱い。心配されて嬉しいなんて不謹慎だろうか。翔也を見ると妄想が甦る。
「一緒に入る?お兄ちゃん」
「バーカ。お断りだ。どうせ一緒に入るなら、不二子ちゃんみたいなナイスバディの美女を希望する」
「悪かったわね、こんな貧相な妹で」
ツンと顔を逸らし階段を早足で下りた。。アニメの美女に勝てる訳ないじゃん!
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