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翔也が告白されたのは事実。でもオーケーしたとは限らない。僅かな希望を信じて翔也を問い詰めた。
「それで!?断ったよね!?断ったんだよね!?」
「何で断んだよ?あんな可愛い子に告白されたらオーケーするだろ普通?」
吐き気がした。オーケーしたと言う事は、翔也と井沢何とかが恋人になると言う事。そうなればキスしたり、体を重ねたり……。
想像するだけで気持ち悪い。翔也が他の女とだなんて……。
「何で?何でオーケーしたの!?お兄ちゃんは彼女作ったら駄目なの!私だけのお兄ちゃんなの!」
涙が止まらなかった。彼女が出来た悔しさ。当たり前だった二人の時間が失われる絶望感。
醜い嫉妬の心が私を蝕んでいく。
「何で彼女出来たら駄目なんだよ?お前ちょっと変だぞ?」
「それは私が翔──」
言いかけて言葉を飲み込んだ。
言えない。言ってしまったらもう妹としても側に居られなくなる。翔也を好きと言う言葉は禁断の果実。
その言葉を口にした時、私はアダムとイブのように罰を受けるだろう。それは楽園を追放された二人のように、私は森沢の家には居られなくなると言う事だ。
お父さんもお母さんも。そして翔也も私を追い出そうなんて考えもしない。私が側に居られないんだ。だって……翔也が彼女と隣の部屋で恋人らしい行為をしていると想像したら、心臓を貫かれてしまう。そんなの耐えられない。
「もういい!」
私は行き先も分からず走り出した。どこでも構わない。とにかく今は翔也の顔を見たくなかった。
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