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最初の標的は美味しそうなのが良い。いずれは全て食べるとはいえ、グルメではいたい。
しかしこの星の原住生物は存外科学が進んでおり、むやみやたらの捕食は逆に狩られる危険性がある。密かに進めていかねば……
ようやく人気が途切れたところで女が一人、アントニーの前を通りがかる。丁度いい相手だ。ぺろりと舌なめずりをして後を追う。
今なら誰も見ていない。女も気付いていない。さあ、体全体を巨大な口にして大きく開いて……!
と、空が暗くなる。
「?」
空を見上げてギョッとした。太陽を覆い隠すほど、巨大な隕石が地球に迫っていたのだ!
「なんだこりゃあ!?」
宇宙船にいた時にこんな兆候はなかった! こんな巨大な質量が衝突したら、地球はひとたまりもないだろう!
アントニーの上げた声に驚いて女は逃げ出してしまったが、それどころじゃない。侵略すべき地球が無くなる!
「宇宙船に戻らなければ……!」
連絡を入れ、戻ろうとするが応答がない。隕石が衝突して壊れてしまったのか!?
絶望だ。終わりだ。この地球と心中するしかない。
そう思っていると、隕石がふとそっぽを向いたようにどこかへ飛んでいく。普通に考えれば有り得ない軌道だ。
「……は?」
呆気に取られて、アントニーはどろどろの姿のまましばらく立ちつくした。
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