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その後もアントニーは何度も捕食をトライした。その度に隕石が空に現れた。
「何の因果か、隕石が降って参りました! じっくりまったり、じわじわと迫ってきております! あぁ、地球はもうお終いです! ばっかんと二つに割れて終わりです! NASAもそう言っています!」
TVの音声がヒステリックに告げる。
アントニーが捕食を諦めると、隕石はまたどこかへ飛んでいく。
食べようとする。
「あぁ! 何度目かの隕石! 一体どういう理由で、どこから現れるのでしょうか! その謎もあの隕石が落ちてきたら全て解ける事もなくお終いです! さようなら皆さん、どうか悔いない最期を!」
止める。隕石はどこかへ飛んでいく。
どうも、どうにも。認めたくはないが、自分の行動によって隕石が現れ、行為を完了しようとすれば恐らく衝突するものだと推測された。
最初に蹴り殺したカラスの言葉を思い出す。
『貴様には呪いをかけてやる。貴様の望みは叶わぬぞ……』
あれはそういう意味だったのか……!
アントニーにとって、隕石自体は大した脅威ではない。かつて一度同じ事態に陥った事があったが、その時にはだいぶ捕食が進んでおり、幾つかを犠牲にしつつも何とか生存できた。
だが彼の目的は地球侵略だ。自分の数を増やして、再び宇宙に拡散する事だ。原住生物も何もかも吹っ飛んでしまってはどうしようもない! 自分自身を増やす間もなく消滅してしまう!
アントニーはがっくりと項垂れた。項垂れすぎて、どろどろの正体が出っ放しだ。粘菌のグジュグジュとした表面を晒しているが、幸い人目はない。
アントニーは思う存分、その場で絶望する事にした。何も見たくない、聞きたくない、感じたくない。感覚の全てを遮断した。
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