3. 核心

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しばらく、ベルが鳴らなかった。 (やはり3人の子持ちは嫌だよな) 何人であれ、妻子持ちには違いない。 そう、思っていた時にベルが鳴った。 「もし、もし、こんにちは!」 いつも、この瞬間が緊張する。 アルバイトの人が出たらどうしようとか お客さんがいたらどうしようとか 「パパ元気してた?」 「本気でパパって呼ぶつもり?」 (ふざけているのか・・な ) 「パパね私もポケベル買ったの、ケンちゃん  (旦那様をそう呼んでいる)と一緒に」 「そう、ならこっちからもメッセージ送れるね」 「そうだよ、ベルでいつでも会話ができるんだよ」  この時のポケットベルは数字変換で文字  (カナ・アルファベット・定型など)  が送れたけど、面倒だから数字でごろ合わせして  送る事が多かった 。  女子高生などは、ほぼ数字語呂合わせで  送っていたと思う。  たとえば『0840』で『おはよう』とか 「パパも送ってね、番号送っておくからね」 (あの、パパ、パパって既に違和感なく  呼べるのはなんなんだろう) 美佳の性格が許せるのだろうか… こういうところも可愛いと思える 電話だけで次第に惹かれていっている。  旦那様と一緒にポケベルを持つことになったのは  なぜか 正直やきもちを焼いてしまったが  持つのは当たり前の事だった。  二人だけの世界なんて許される訳もなく  誰も許してくれる訳もなかった。  自惚れかもしれないが、ただ  美佳は間違いなく私の近くにいてくれる、  気持になっていた。
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