23人が本棚に入れています
本棚に追加
しばらく、ベルが鳴らなかった。
(やはり3人の子持ちは嫌だよな)
何人であれ、妻子持ちには違いない。
そう、思っていた時にベルが鳴った。
「もし、もし、こんにちは!」
いつも、この瞬間が緊張する。
アルバイトの人が出たらどうしようとか
お客さんがいたらどうしようとか
「パパ元気してた?」
「本気でパパって呼ぶつもり?」
(ふざけているのか・・な )
「パパね私もポケベル買ったの、ケンちゃん
(旦那様をそう呼んでいる)と一緒に」
「そう、ならこっちからもメッセージ送れるね」
「そうだよ、ベルでいつでも会話ができるんだよ」
この時のポケットベルは数字変換で文字
(カナ・アルファベット・定型など)
が送れたけど、面倒だから数字でごろ合わせして
送る事が多かった 。
女子高生などは、ほぼ数字語呂合わせで
送っていたと思う。
たとえば『0840』で『おはよう』とか
「パパも送ってね、番号送っておくからね」
(あの、パパ、パパって既に違和感なく
呼べるのはなんなんだろう)
美佳の性格が許せるのだろうか…
こういうところも可愛いと思える
電話だけで次第に惹かれていっている。
旦那様と一緒にポケベルを持つことになったのは
なぜか 正直やきもちを焼いてしまったが
持つのは当たり前の事だった。
二人だけの世界なんて許される訳もなく
誰も許してくれる訳もなかった。
自惚れかもしれないが、ただ
美佳は間違いなく私の近くにいてくれる、
気持になっていた。
最初のコメントを投稿しよう!