序章

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序章

 小難しい書類に目を通しながら「ああでも無い」「こうでもない」とソロモンは何やら唸っていた。時刻は、ちょうど昼の十二時。  春のうららかな日差しが指し、思わずまどろみの中へと誘われそうなほど外は暖かそうであった。けれど、それとは対照的にソロモンは眉間に皺を寄せてうんうん唸る。そんなソロモンの邪魔をしないようにエリスは、机の上に珈琲を入れたカップを置くと()()()()とその場を去った。それから、マリアの元へ行こうと階段を上っていると血相を変えたレイヴァンと遭遇する。  あまりの彼の表情の変わりっぷりにエリスは思わず目を丸くして固まった。 「マリア様を見なかったか」  慌てた口調でまくし立てる彼にエリスは、困ったような表情を浮かべた。 「何か知っているのか」  エリスは、冷や汗を浮かべるばかりで口を開こうとしない。そんな彼にレイヴァンは、痺れを切らしてもう一度、同じ事を問いかけた。とうとうエリスの方が折れて口を開いた。 「姫様でしたら、おそらく城下町ではないでしょうか」
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