深海のくじらは夜空を眺める

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夏休み 地区大会に向けて、夏休み期間に追い込みの強化練習をする 「柘榴、おはよう… 夏休みは来れないって言ってたけど、出れるようになったの?」 「うん…! 月末に地区大会あるじゃん!演劇部の裏方ではあるけど、一員として、柘榴も仲間たちのバックアップしないとねっ!」 「そ、っか…」 来れないと言っていた大倉山さんも、なんだかんだ来て ほぼ演劇部全員が、地区大会に向けて気合十分だ ストレッチが終わり、いつもの基礎練で校外ラン 走っていると、目の前に大倉山さんと自由ヶ丘くんが歩きながら、何か話している 横目に二人を抜かすと、少し先に走っている、背の高い、サラサラな髪を靡かせる… 「反町くん」 「代官山くん」 笑顔で私を見た反町くんは…太陽に照らされ…なんだか眩しくて かっこよく…見えたんだ ランが終わり、今日は本番用の衣装を着て、通しをする 私は、劇で主役ではないけれどケートスと言う、鯨の役 脇役だし敵役だし怪物なんだけど、物語の中ではネームドで、重要な役割をする役でもある 綺麗な水色のドレスに着替えて、鏡を見ていたら… 反町くんに見て欲しい、感想が欲しい…なんて思った 「ケートスの衣装、どう…かな…?」 反町くんを見つけて、ドレス姿を披露する 声を掛けた時 きょとんとしたような顔をして、口を真一文字に結んだ反町くんの反応に ちょっと、戸惑ったけど 「ドレス、似合っているぞ」 そう笑顔で言ってくれた反町くんの表情に、安堵と…嬉しさ 「本当? ありがとう!」 夏休みの強化練習を送りながら、ついに本番を迎えた地区大会 物語はギリシャ神話のアンドロメダ物語 アンドロメダの物語は、エチオピアの王であるケフェウスの妻、カシオペアが 海に住む神々より、自分が美しい と言った事で、海の神々の怒りを買ってしまうのが事の発端 海の神々は海の怪物、ケートスにエチオピア国を襲わせ、深刻な水災害をもたらす それに困ったケフェウスとカシオペアは、神に神託を乞うと 娘のアンドロメダを、ケートスの贄にしろと言われるのだ 国の平穏の為に、生贄になるアンドロメダだったが メデューサ退治に出かけていたペルセウスが 持っていたメデューサの首をケートスに掲げると、ケートスは石化し アンドロメダは間一髪のところでペルセウスに救われる…と言う話 会場には、地元の色々な高校の人達が集まっている 他校の人と関わる事なんて、普段、同中で別の高校に進学した友人しかない でもそれは友人だから、他校だったとしても関わっているわけで… ここにいる人は、他校の人で、更に見ず知らずの赤の他人… ああ… なんかみんな…強そうだし… 怖い… なんて、緊張が高まった時 「今までやって来た練習をここでもこなすだけだ なにも緊張する事などない 普段通り、いつも通り、みなの実力を存分に発揮していくぞ!」 と、部長が部員達に言った言葉で、さっきの緊張が幾分かおさまった そうだよね 普段通り、いつも通りの私で… 大会の幕が開け、私達の劇が始まる 「地区大会の突破、まずはご苦労であった ただ、勝って兜の緒を締めよ、とあるように 次は都道府県大会だ より一層、気持ちを引き締め 今回のような団結と、そして、今回以上に躍進して行くぞ!」 地区大会の予選を突破した後、部長の言葉に お祝いモードで浮かれていた周りの緊張が高まったような、ピリッとしたものを感じた そうだ… ここで浮かれていては…ダメ… 私達が目指しているのは、全国なんだから… なんて思い直して気を引き締め、秋に行われる都道府県大会へと気持ちを新たにする そんな、ある日の事…だったんだ
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