深海のくじらは夜空を眺める

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部活終わり 昇降口で靴を履き替え、帰ろうとした時 見慣れた後姿を再び見かけた 反町くん… 一人…なのかな… 声、かけようかな… 一緒に帰ろう…って… 「反…」 あれ… なんで、反対方向に… 正門じゃない方に向かって行く反町くんが気になって こっそりと バレないように後を追う 校舎裏の、トウカエデの木が植えられている場所 そこには 「なんでしょうか、部長」 部長… しかも…二人きり… ど、どうしよう… もしかしたらこれ… 見ちゃいけない場面かも… いけない…けど… いけない…のに… 部長と何、話してるの…? 反町くん… 「まあ、たいした話ではないのだが… 私は普段の休日は予定があって、忙しい事が多い しかし、今週の土曜日と日曜日はスケージュールが、たまたま空いている まあ、無理なら、来週の土曜と日曜もたまたま空いている 反町は予定どうだ?」 反射的に校門に向かって走る だって 反町くんの答えを 聞いてしまう事になる それが、なんだかすごく嫌になった いや そもそも 勝手について行って 勝手に盗み聞きのような事をしておいて…だけど… でも 反町くんの答えを、聞きたくないと思ったんだ だって 反町くんは… 私の、大切な人…だから 大切な人だから 知りたく、ない… 知りたくないけど… あなたを見つけてしまうと あなたの事を、何でも知りたいと思ってしまうのは 目が離せないのは、なんで? 矛盾してるよ… 駅に着いて、電車を待つ間に早速携帯を見る 今まで、閲覧ばかりで 自分で利用した事はなかったけど… でも この状態がなんなのか なんで反町くんに、こんな気持ちになるのか 気になる… アカウントを作成して、気になる疑問を、ネットの知恵袋に投稿した 翌朝 寝起きに携帯を見て、昨日投稿した内容を確認する あ、コメントが付いてる…! 匿名希望さん 20xx/x/x x:xx 知りたいけど、同時に知りたくないという感情は、とても人間らしい矛盾ですね もっとその人について知ることで、自分の感情が変わるかもしれないという不安や、知らない方が良いこともあるかもしれないという恐れから来るものかもしれません 不安や…恐れ… そうだったんだ *********さん 20xx/x/x x:xx それは、恋をしているからです えっ… あなたの大切な人は、あなたの好きな人なんです 私の…好きな人… 好きな人との恋、楽しんで下さいね 好きな人との…恋… 私の大切な人は 反町くんは… 私の、好きな人… 学校に登校すると、昇降口にある自販機の前で 見覚えのあるメンバー 「駆ん、奢ってよぉ~! 柘榴、いちご牛乳がいいなぁ~!」 「なんで柘榴に奢ってやんなきゃなんねーんだよ!」 「じゃあ男気じゃんけん勝ー負っ!」 「なにぃっ!?」 妙蓮寺さんと、自由ヶ丘くんと、大倉山さん… 「おはよう、代官山さん」 「あー!おはよん、海樹ちゃん」 「おはー、代官山」 「お、おはよう」 三人… いつも一緒で…仲いいな… 昇降口を抜けて、図書室やカウンセラー室、保健室を通り過ぎて、階段を登った先 一年のクラスがある階の廊下で、目の前に見慣れた後姿… 見つけた瞬間 声を掛けたくて、歩むスピードが速くなる 「そ、反町くん…!」 振り返った、君 「代官山くん」 「っおはよう…!」 「おはよう」 笑顔の… 反町くん 私の、好きな人…
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