深海のくじらは夜空を眺める

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都道府県大会が終わった後は、すぐに文化祭で 大会でした演目と同じ演目を文化祭でも披露した 「みな 昨日、今日と文化祭ご苦労であった 私達三年は、これで部は引退するが 残された二年、一年は、来年新たに入部する新一年の規範となるよう、さらなる活躍の健闘と、邁進を祈る!」 部長がそう言うと お疲れ様ですと言う労いの言葉や ありがとうございますと言う感謝の言葉や 寂しいと言う感情表現の言葉も聞こえた 「そして 引退する私たちに代わって 本日から新部長、新副部長となる人間だが、三年の総意で決定したので発表する」 新部長…と新副部長… 「まず、新副部長…」 と、部長が名前を呼び、二年の女の先輩が選ばれていた 「そして、新部長だが… 反町、お前が新部長だ」 反町くん… 「えっ、反町が!?」 「嘘…マジで…」 「一年なのに…」 自由ヶ丘くんや、妙蓮寺さんの小さな声が聞こえて来る中、反町くんを見ると反町くんは部長を見て、神妙な雰囲気の…何とも言えない顔をしていた どう言う感情なのか、表情では読めない 「三年の総意で決定、と言ったが、意見のあるものは遠慮なく言ってくれて構わない 振替休日の二日間、期間を設ける 意見が出ない場合は、確定事項とする 以上だ」 そんな出来事があって数日後 休みのはずの部室に明かりが灯っていて 誰かいるのかと、部室に歩みを進めた だって もしかしたら 部活が休みなのに練習をしている、練習熱心な… 頑張り屋な人がいるのかな、なんて思ったからだ 少し前の私がそうだったように… 部室に人影があり、覗く 「…と、これが部長のやる事だ」 「やる事多いですね」 え… 部長と反町くん… 「そうだ 部長はやる事が多いのだ」 「そうだ、って… 部長が決めたくせに」 「ふっ… だけど 反町だから、出来ると思った 後は任せたぞ」 思わず 踵を返して、なるべく足音を立てないよう部室を後にする バクバクとしている心臓は 早歩きで昇降口まで駆け抜けているからでは…ない 『反町だから、出来ると思った 後は任せたぞ』 だって あんな… あんな、部長の表情、今まで見たことない… あんな女みたいな顔して、優しそうに… 男装の麗人なんて…喩えられている人なのに… 『そうだ、って… 部長が決めたくせに』 反町くんも… 私達と話すとき あんな砕けた…と言うのか、フランクな言い方した事…あったっけ… 私達の中の反町くんは かっこよくて 聡明で 頼れる… みんなのリーダーで… 『気負わず、気楽にいけば、大丈夫だ』 『もしそれでも緊張してしまったら 私を見たまえ』 『その、笑顔だ』 なのに… 胸が苦しい ミラはくじら座の、心臓 あなたの一挙手一投足で輝きを変える変光星
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