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「家帰っても1人やろ。泊まっていけや」
私がラーメンを食べる終わるのを待ってたかのように、最後の麺を啜り切ると同時にシュンはそう提案してくれてん。
「え、泊まっていいん?」
「ええで、あした日曜やし学校ないやろ」
シュンはやっぱり友達や。そして私はこんなにも幸せでええんやろか。ここからちょっと離れた病室では今もじいちゃんはばあちゃんの手を握ってるんやろな。
私はなんか少し恥ずかしくなってん。
自分が幸せなことが恥ずかしかってん。
多分弱いってことやと思う。
「先に風呂入ってこいよ」
そんな優しさを背中で受けてわたしは洗面所に向かった。
小さな洗面台にはコップが1つ置かれていてその中に緑色の歯ブラシが立てかけられてた。私の家の3分の1の歯ブラシ。目に見える1って数字にわたしは少し胸が苦しくなってん。
やからって訳ではないねんけどわたしはその歯ブラシを手に取ってじっくりと見つめてみた。長い間使われてるんかしてブラシの部分が外側に少し広がっていた。わたしは中心部分の、1番真っ直ぐと空向かって生えてる毛を1本手でつまんで抜いてみた。
1本減ったところで見た目の変わらへん歯ブラシをコップに戻してわたしは服を脱いだ。
浴室は私の家のよりもかなり狭かくて洗い場にはかなり小さいバスチェアが置かれてあった。
それはわたしにとっても小さくて座ってみると足が余って、おへそくらいまで膝が上がった。
向かいにある鏡には私のぺったんこな胸が写っていてちょっと悲しくなった。シャワーを手に取って鏡にかけると、水が鏡の上を垂れてそれに伴い私が少し歪んだ。
目を瞑り頭から髪の毛を濡らしてシャンプーを付けてゴシゴシ擦る。
顎先まである髪の毛をピンっと立ててスカイツリーみたいにして遊んでみた。
シュンに見てもらいたかってんけど呼ぶのはやめといた。
シャンプーを全部ながして、次は体を丁寧に洗った。
シャンプーやボディーソープで生まれ変われたらいいな。って毎回思いながら体をゆっくりと撫でるねん。けど、体の変化を上手いこと感じ取れんくて毎回ちょっと悲しくなる。
シャワーで綺麗に全部ながしたら私は浴槽に使った。私の家のより一回り小さかってんけどお湯の温度はめっちゃ熱かった。
初めはおしり辺りが暑さのせいでジンジンしたけど、慣れたらほんまに心地いい温度やった。
私は今日1日の幸、不幸をしっかりと噛み締めるために息を止めて頭までザブーンって潜ってみてん。
ばあちゃんはいつ死ぬんやろか。ばあちゃんが死んだら私の生活はどうなってしまうんやろ。
じいちゃんはばあちゃんで埋めてた心の穴を私で埋めてくれるんやろか、それとも、その穴は狂気と化して、私を傷つけるんやろか。
そこまで考えたら苦しくなったから1回水面から頭を出した。
スーっと1回息を吸ってもう1回戻る。
潜ると言うより、もどる。
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