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歩いて3分くらいで着いたシュンの家は絵に書いたようなぼろアパートやった。二階建てのそれはシュンに連れて来てもらわなければ近づこうとも思わないし、近づきたくもなかった。
一階には住居者が使うポストがあってんけど部屋番号が書かれたプレートはほとんどが剥げてて、文字は読まれへん。なんかホラー映画に出てくる建物みたいで、シュンが凄く悲しい場所にいる気がした。
シュンの部屋は2階やから階段を登ってんけど、その階段がすっごい急やし、一段登るごとにミシミシ言うし。
シュンは慣れてるからひょいひょい上がって行ったけどわたしは手すりに捕まりながらゆっくりとしか上がられへんかった。
手すりのサビが手の平について、少し銅色に染まった。
シュンの部屋は2階の一番端やから、そこに行くまでに4部屋分の玄関ドアの前を通ってんけど、どの部屋のドアも錆び付いてるし、表札はボロボロで読まれへんし、玄関ドアについてる郵便受けの蓋が取れて中が覗けるような部屋もあった。
少し中を覗きたい衝動に駆られたけど、さすがにそれは失礼やからやめといた。
シュンに手招きされて入った部屋は空っぽやった。
4歩で歩けちゃうような短い廊下の右手にトイレと風呂場が小さくあって。それをいけば、そこはもうリビングやった。正方形のリビングの左下にはキッチンがあって、その横に冷蔵庫、その横に小さなタンスがあった。
信号機の赤、黄、青みたいに綺麗に並んでた。
そのキッチンは綺麗やった
あ、使われてないんやろうな。って感じやった。
使うだけ使って、消費だけされて汚く醜いそれもいややけど、使われることなくピカピカに輝くそれも悲しさと寂しさを含んでた。
リビングのど真ん中に布団が敷かれていて、その横にはコードの伸びたケトルポットがあってそれを囲むようにたくさんのカップヌードルや鯖缶など非常食のような組み合わせが転がっている。
「適当に座ってええで」布団の上にあぐらをかいてるシュンは言う。
私は、なんか布団の上に座るのは気が引けたからフローリングの上に直接座ったわ。長い距離歩いたせいで少し暑かったからヒンヤリしてるそれは心地よかった。
会話もなくシュンはポケットから取り出したスマホを触ってた。することのなくなった私はもう一度部屋をグルっと見渡した。
白い壁紙にはところどころシミがあって1、2、3とそれを数えた。
ちょうど26個目を見つけた時、
「ケイゴはなにしてたん」
ってシュンに聞かれた。
シミ数えてた。って答えそうになってんけど、シュンが聞きたいのは、なんで小学校の前通ったん?って意味やってことに気づいたから、わたしは今朝から今までのことを話すことにした。
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