春に触れる。

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アイスを食べ終わったわたしらはシュンのスマホを使って映画を見た。 「生まれて1回も映画館に行ったことない」ってシュンに言うたら、 「ケイゴの生きる世界ってめっちゃ小さいねんな」って言われた。 なんか凄く悲しい気持ちと、理解してくれるんや。って言う嬉しい気持ちが私の中で戦ってた。 「そやねんな、私の世界なんて半径1メートルくらいやわ」 「まぁけどそれなら誰かと手を繋ぐことくらいははできるな」そう言うとシュンは少し恥ずかしそうに映画に視線を戻した。 なんか漫画みたいなセリフに思わず私も恥ずかしくなったわ。 その映画はYouTubeに上がっている無料のやつで、白黒の男女が踊ったり、喧嘩したり、たまにセックスしたりとよく分からん内容やった。 隣のシュンも首傾げてたからやっぱり難しい内容やったんやと思う。 シュンと1つの感情を半分こしてるみたいやって、おもんない映画やったけど「まだ終わるな」って何回も思ったわ。けど私の願いは届かずに1時間ちょっとで映画は終わった。 エンドロールを見ずにスマホの電源を切ったシュンは私の顔を見て 「物語が終わったらそれでいいねん」って言った。 映画のラストで男と女は結婚したけど、あの後2人はどうなったんやろ。 ハッピーエンドをいつまで継続させることが出来たんやろか。 あれは1つの幸せな区切りなだけであって、あの二人は不幸になることもあるんやろか。 私は背中を向けあって毎晩寝る2人を想像した。 映画の感想を言い合う。なんてそんな大人っぽいことはせんかった。 代わりに私たちは散歩に行くことにしてん。 アパートのミシミシ言う階段、上るより、下る方がなんか怖くて そんな私をシュンは優しく見守ってくれた。
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