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私がシュンの隠れている電柱の前を行き過ぎると同時にシュンも飛び出してきてわたしらは並んで走った。
初めてシュンに会った時とはちがってどこまでも走れる気がしてん。隣に人がいるってこんなにも違うねんな。
けどな、走れば走るほど体は「もっと、もっと酸素ちょうだい」って言ってきて、それに応えるために必死に酸素を吸ったらその酸素に混じって罪悪感も吸ってる気がしてきて、どんどん苦しさと悲しさが込み上げてきた。
結局わたしらは15分くらい走って前の公園にたどり着いた。
その頃には冬っていうのに2人とも汗かいてて、シュンの体は湯気がでてた。
天に登っていくその白い湯気はタバコの煙の何倍もいい香りがした。
前回と同じベンチに座ったわたしは悲しさで満タンになっててん。
あと1滴も貯められへんくらいに。
もし、こん時、シュンが「よくやった」とか「やるやん」とか。
とにかく褒めてくれたり、嬉しそうな顔をしてくれてたらわたしは強くなれた気がする。けどな、シュンの方を見た時、私より悲しそうな顔してたから、もう限界でわたしは泣いてもうた。
「ごめんな、ごめんな」シュンが泣きそうな顔で私にそう言う。
私の涙は加速した。シュンが表面張力いっぱいいっぱいの悲しみを持っているのが目に見えて、それがまた私を辛くさせた。
気がついたらシュンの「ごめん」の声が震えだしてわたしらは冬の空の下、互いを抱えあってワンワン泣いた。
それは友情でも愛でもなんでもなくて、ただそうするしか生きれない2人みたいやった。
ポケットはタバコで膨らんでて、
膨らんで欲しいのはポケットじゃなくて胸なんよ。ってわたしは思った。
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