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シュンの部屋に戻ってきた。
部屋の中は、わたしらが出た時となんも変わってなくて、それはシュンがほんまに一人暮らししてるんや。って私に教えてくれた。
涙はもう乾いたけど、代わりに目の周りが目ヤニやら涙の跡やでカピカピやったけどわたしは別にそれをとって綺麗にしたいとは思わんかった。
私とは反対にシュンは泣き止むと直ぐに目の周りを擦り、またあの瞳で私を見て「帰ろっか」って言った。
けど、その瞳はさっきと違ってちょっと濁っててん。
そんな瞳に私が上手に写れてるんかちょっと気になったけど、そんなにじっくりと見つめる勇気か私にはなかったわ。
家に着いてからは一言も話すことなくて、「ラーメンやったらあるから今日の晩飯ここで食って行けや」が1言目やったわ。
こんな夜に1人で帰って、ご飯食べる元気も勇気も私にはなかったからお言葉に甘えることにしてん。
ちょっと待っとけよ。言うてシュンはケトルポット持って立ち上がった。
キッチンでケトルポットに水を注ぎながらタンスの一段目を開けてラーメンを探すシュンを横目にわたしはまた壁のシミを数え始めた。
さっきは無限に見つけれてたシミが、なんでか16個しか見つけれんくて、わたしは目がおかしなったんかなって心配なって目をいっぱい擦ったら目ヤニやらがパラパラとフローリングの上に雪みたいに落ちたわ。
もうシミを数える気にはならんかったから、わたしはぼーっとシュンの方を見つめてた。ケトルの先から注がれるお湯はカップラーメンを満たしていく。こんなふうに私の涙も何かを満たせたらええのにな。
ただ零れるだけなんてもったいないわ。
「はいよ」
2つのカップヌードルと水の入ったコップ、箸を2膳乗せたお盆をシュンは私の目の前の地面に置いた。
カップヌードルは家でも夜ご飯としてたまに登場するからよく食べるんやけど、それでもこんなに美味しいカップヌードルは食べたことなかった。勢いよく麺を啜る私を見てから、シュンは食べ始めた。
「美味いやろ」
その問いに答えるようにわたしはラーメンを口へと駆け込んだ。
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