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浴室から出ると私には見たことない体操服が置いてあって、リビングの方から
「デカいかもやけどそれ来てええで」っていうシュンの声が聞こえてきた。
私の体に対してそれは少し大きくて、袖から手が出えへんかった。
ズボンも長くて、裾を踏んでコケそうやったから2回くらいおったわ。
私が髪の毛を拭きながらリビングに行くとシュンはスマホを触りながら寝転がってた。
「気持ちよかったか」
「うん、ええ湯やったわ」
「そうか、俺も入ってくるから寝ててええで。眠いやろ」
「まだ寝やんわ」
そう言ったけどほんまはめっちゃ眠かった。
今日は私の人生の中ですごい非日常やったからな。疲れてもたわ。
シュンは「よっこらしょ」って立ち上がって
「じゃあ風呂入ってくるわ」言うた。
「覗くなよ」とも言うた。
「覗かんわ」
シュンは少し笑いながら洗面所へと消えていった。
一人残された部屋で、わたしは布団に寝っ転がった。
目を閉じたらめっちゃ心地よかった。
パズルのピースがぴっちりと型にハマるように、なんかわたしはここにすごいしっくりと来た。この場所、この空間にわたしは溶けてしまいそうやった。
それは凄く幸せなことで、少し怖いことやった。
わたしはシュンの枕を手に取って顔に押し付けてみた。
柔軟剤の匂いがして、それは私の家の匂いとは全然違うくて、わたしの意識は遠のいた。
ドンドンって壁を叩く振動が床にまで伝わって、それで私は起きた。
部屋は暗くてシュンの舌打ちが1回聞こえた。私が上半身を起こして目を擦ると
「あ、ごめん起きた」って暗闇の中でぺこりとシュンは頭を下げた。
地面にあるカップヌードルやらケトルポットやらを踏まんように慎重にシュンは私の横に歩いてきた。
私たちは布団の上で向かい合って座った。
シュンは言うた
「隣の部屋からさセックスの音聞こえてくるんよ、気持ち悪くてしゃーないわ」
両手を肩の位置まで上げてやれやれ、って顔をした。
それから、「起こしてごめん、さ、寝よか」言うてんけど、私はなんか眠たくなかったから「ちょっと喋ろや」って提案してみてん、けど、よく考えたらわたしは先に寝てたから眠たくないだけでシュンはもしかしたら眠かったかも。私って自己中心的よな。
そんな私をシュンの優しさが包むかのように、「ええで」って言うてくれた。
けどな、喋ろうか。って構えてしまうと何話せばいいか分からんくて五分くらいは沈黙が続いたわ。
そしたら隣の部屋からセックスの音が聞こえてきた。女のアンアン言う甲高い声と、皮膚と皮膚がぶつかる音はめっちゃ本能的やったし、それと同時に愛を感じれて、でも作業的でもあった。
隣からシュンの呆れと苛立ちが混じったようなため息が聞こえた。
「これ毎日なん」
何を話せばいいか分からんくなってたから、私は五感に触れたものをそのまま話すことにしてん。
「週に2回とか3回やな」
騒音が週に2回、3回聞こえてくるのはめっちゃ多いけど、セックスの回数としてはそれが多いんか少ないんか私には判断できひんかった。
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