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「めっちゃ気持ち悪いやろ、なんか女の声も作りもんみたいやし」
「たしかにな」
あ、電気つける?って聞いてくれたけどわたしは、いらん。って言うた。暗い方が私は私で話すことができるからさ。
「めっちゃ気持ち悪いけどさ、俺らもああやって生まれてきたわけやん。って考えたら人って汚いような気がするよな」
私はシュンの言ってることがなんとなくわかる気がした。セックスが男女共に快楽なんかを伴わず、ただただ苦しくて痛いだけやったら世界はもっと綺麗やったと思う。
「セックスって気持ちええんかな。よくクラスの男子が話してるねんけど全く想像つかへんわ」
「どうなんやろな。けど気持ちええからみんなするんとちゃうんかな」
「なんかな、セックスが気持ちいいせいで私は自分が快楽の副産物みたいな気がして、ほんまに悲しくなる時があるねん。愛があるのはセックスにだけで、私が生まれたのは副作用みたいなもん」
私は自分で言うてて悔しくて声が震えてきた。弱い姿を見せてシュンに見捨てられたくなかったから私は寝返りを打ってシュンに背中を向けた。そんな私の背中にそっと手が触れて、ゆっくりと撫でてくれた。
服越しに伝わってくる優しさの温度は私の体温と同化していった。
「シュンは一人暮らし寂しくないん」
私はシュンの優しさにもたれかかってそんなことを聞いてもうた。
「寂しいよ、週に1回か2回来てくれてた親もここ最近全然来やんくなったし」
「なんで来やんくなったん」
これ以上踏み込んだら一緒に溺れてしまいそうやったけど、それでもこの夜は私を大胆にしてしまった。
「なんでって、あれ、知らんの」
「知らんってなにを」
「まぁ、知らならいいよ。いろいろあるねん。いろいろ」
「そうか」
私はそれ以上聞くことはやめといた。その代わり私の話を少ししたくなった。教室内で一日に一回は必ず聞く「好きな人教えて、私も教えるから」ってやつに似てた。
シュンにもっと近寄りたくて、そのためには私が語るのが1番近道な気がしたから。
「私なお母さんを殺してん」
その瞬間だけ一定のリズムで私の背中をさすってくれてたシュンの手が止まった。
けど直ぐにまた同じリズムでさすってくれた。
私は心地よくて、そのまま眠りについた。
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