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プロローグ
綺麗にカッティングされた宝石は、キラキラ光を反射してたくさんの人を惹きつける。
体育の授業中、私、明護要芽はこっそり持ってきていたコンパクトサイズの宝石図鑑を見てうっとりとため息をついた。
「原石も原石なりの魅力があるし、他のパワーストーンも好きだけど……やっぱり宝石のきらめきは素敵だよねぇ」
研究され計算されたカッティング技術のおかげで、最高のきらめきを放っている宝石たち。
その写真を見ているだけで幸せな気分になっちゃう!
エメラルド、ルビー、それになんと言ってもダイヤモンド。
「本当、綺麗……」
「コラ! 要芽さん!」
夢中になって見ていたら、突然図鑑を取られた。
ビックリして見上げると担任の長谷川先生がメガネをクイッと上げて眉間にしわを寄せている。
「今は授業中でしょう? ちゃんと男子の応援をしてください」
「……はーい、すみませんでした」
授業中に関係のない本を見ていたんだから自分が悪いのはわかってる。
だから素直にあやまったのに……。
「しかも家の本を持ってきて……これは没収です。放課後に職員室へ取りに来てください」
「ええ!?」
「あと、体育が終わったらボールの片づけをしてくださいね」
「ええ!?」
図鑑を返してくれないだけでなく面倒な片づけまで!?
そんな!って悲鳴みたいな声を上げたけれど、長谷川先生は男子の試合に戻っちゃった。
今日の体育の授業はバスケ。
男女別で試合しているんだけど、試合していない人は応援するだけ。
ひまそうだなーと思って図鑑を忍ばせてきたのが悪かったのか……。
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