プロローグ

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「要芽ちゃんまたやってるよ」 「可愛いのに、ちょっとした問題児だよね」  ちょっと離れたところから女子の笑い()じりの声が聞こえる。  問題児呼ばわりはちょっと不満(ふまん)だけれど、間違ってないからムスッとだまった。 「まったく、だから止めときなって言ったじゃない」  そう声をかけてきたのは私の唯一(ゆいいつ)の親友でもある鈴木(すずき)柚乃(ゆの)。  こげ茶のツインテールを()らして、猫目を少し細くしてあきれまじりに笑ってる。  たしかに授業前に柚乃にはそう言われたけどさ……。 「……バレないと思ったんだもん」 「いや、めっちゃ下向いてニヤニヤしてたし。気づかれないわけないって」  言い訳じみたことを言うとつっ込まれた。  そのせいでさらに私はムスッとだまってしまう。  そんな私に柚乃は「今度こそちゃんと応援しよ」と男子の試合をうながした。  みんなは普通に応援しているし、一部の子はシュートを決めた誰々がカッコイイなんて言って()り上がっているけれど、私は正直興味がない。  私自身が運動苦手だからってこともあるけれど、やっぱり宝石やパワーストーンを見たりそれにまつわる本を読んでいる方が好きだし。  だからこっそり図鑑持ってきちゃったんだけどね。 「でも没収された上に片づけしなきゃないなんて……サイアク」  私はふてくされながら男子の試合をただ見ていた。
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