仕事中/優しすぎるでしょ......

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仕事中/優しすぎるでしょ......

 話しながら感じたのは、表し難い恥ずかしさと、少しの虚しさだった。  自分の生き様というか......  そういうことを、誰かに話すために言葉にしてしまうと、やはりどうしても、自分のそれらが、二十年以上生きている人間としてはあまりにも、薄っぺらくて弱々しいことが、露呈する。  目標とか夢とか希望とか、そういう若いうちに抱いた方が良かったモノに対して、俺は一切向き合おうとはしなくて、その代わりにいつも、その場のノリとか、雰囲気とか、そういう世間にありふれている不確かな何かに従って生きていて......  そんな生き方の成れの果てが、たぶん今の俺なのだろう。  そう思いながら俺は、もう少しで目的地である届け先に到着することをカーナビで確認して、アクセルからは足を離して、スピードを緩める。  そして届け先である中小企業の駐車場に差し掛かった辺りで、後ろに座るJKが反応する。 「あっ、誘導しようか?オーライ、オーライってやつ」 「バーカ、要らねぇよそんなの。大人しくスマホポチポチしてろ」  そう言いながら俺は、その企業の駐車場に入って、いつも通りのやり方で駐車する。  そしてその後は、助手席に置いてあった段ボールを手に持って、エンジンはそのままに、車から出る。  車から出るときに、後ろに座るJKに声を掛ける。 「じゃあ、ちょっと行って来るから。大人しくしてろよ......」 「はーい、行ってらっしゃ~い」  その言葉を聞いた後、俺は扉を閉めた。 「仕事中に、何やってんだか......」  閉めた後、不意に口にしたその言葉は、たぶん俺にしか聞こえない。  車の窓から見える、小さな段ボールを手に持って会社の中に入って行くおじさんの姿には、何故だか少しだけ安心出来た。  それにあの段ボールは、サービスエリアで私を後ろに座らせる際に、わざわざ助手席に移動させたモノだ。  運転席を見ると、車のキーは抜いていない。  たぶん理由は、エンジンを止めると、車内の空調が止まるから...... 「......いや、見ず知らずの人に、優しすぎるでしょ......」  そう呟きながらも私は、未だに携帯電話からは視線を外せない。  たぶん、信じたくないのだ......  縁も所縁もない、本当に見ず知らずの他人である私に、ここまでのことをしてくれる人がいることに......  本当はもっと現状が、見るに耐えない劣悪な状況であることを、そんなバカなことを望んでいる自分が居ることに......  
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