助手席のJK

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助手席のJK

 届け先に荷物を届けて車に戻ると、さっきまでの、車から出た時の光景とは、明らかに違っていた。 「......っ」 「なに?」 「なに?じゃねーよ。むしろそれは俺の台詞。なんでお前......」 「ひーめーか」 「......っ」 「......」 「......はぁ......なんで妃花が、今度は助手席に居るの?」 「べつに......もう後ろは飽きたから......席替えだよ、席替え」  そう言いながら、相変わらずに視線は、自分の携帯電話を見ている。  そんな風に携帯を見るのであれば、べつに何処に座って居ても変わらないだろうに......  そう思いながら、俺は彼女の方を見ていた。  あれ......?  隣で見ていれば、案外すぐに気付けたことだった。  以外にも彼女は、彼女の携帯電話は、ただ最初のホーム画面を映しているだけで、何かのアプリをポチポチしているわけではなかったのだ。  そしてそのまま、何もしようとはしない彼女の指は、ただ単に彼女の携帯を掴んでいただけだった。  誰かからの連絡を、待っているのだろうか......?  そんな風に、素直に尋ねれば済む話ではあるのだが、しかしそれはまぁ、俺には関係のないことで、なんなら立ち入ってはいけない、彼女の不可侵な部分だと思うから......  だからまぁ、勘違いしてはいけないのである。  そう思いながら、どうしたものかとも思いながら、車の扉を閉めて数秒程、ただ何もしない時間が経過した。  そしてその不自然な程に違和感のある空白に、隣の彼女は疑問を口にする。 「ねぇ、行かないの?」  そう言われた瞬間、俺は彼女の瞳を見た。  さっきまでは後ろの席に居て、ロクに視線すら合わなせなくて、なんなら初めて俺に声を掛けた時は、どういう訳かずっと俯いていたから......  だからこの時初めて、俺は彼女の瞳を見て、会話した。 「おじさん?」 「......助手席に座るなら、ちゃんとシートベルトしろよ」  そう言いながら、俺は自分のシートベルトをして、ミラーの位置と、人がいないことを確認して、サイドブレーキを踏んで、ドライブにいれて、車を動かす。  そして車は、ゆっくりと動き出す。  さっきと同じような田舎道に車体を乗り出して、次第に緩やかな速度で加速する。  加速させながら、俺は少し考える。  助手席に座るJKの瞳は、何処にでもいる様な普通の女子高生のそれとは明らかに違っている様に俺には見えた。  明らかに哀愁が、多過ぎて......          
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