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オトナとコドモ
仕事を全てやり終えた後、車中泊の準備をする。
夕飯はファミレスで、風呂は銭湯で済ませた後、運転席と助手席を、安眠出来る位の角度に倒す。
「......寒いか?」
「平気。私暑がりだから」
「そっか......」
そう言いながら俺は、なるべく隣には視線を向けない様に気を付ける。
元から何もする気はないけれど、それでも、風呂上がりのJKが隣に居ると思うと、なんだかやっぱり、落ち着かない。
「ねぇ、おじさん」
そんな俺の心境なんかは知る由もない彼女は、俺の方を向いて声を掛ける。
「ん?」
そしてだから俺も、彼女の方に視線を向けて、応答する。
「変態」
「なんでだよ」
「なんとなく」
「......むやみにオトナを傷付けてはいけません」
「それ、なんだか情けないねぇ~」
「しまいにゃ泣くぞ?」
「フフッ、それはそれで見物」
「......」
「ん?どうしたの?」
「いや、最近のコドモは恐ろしいと思ってさぁ~」
「そう?でも最近のオトナだって、それなりに恐ろしいと思うけど?」
「......その心は?」
「......まぁ、経験則かな」
そう言いながら彼女は、俺から視線を外す。
けれどそんな彼女を見ながら、俺は考える。
本来ならもっと早く、もっと真剣に考えなくてはいけなかった事柄を、今更ながら考える。
なんであんな所に、この子は居たのだろうか?
聴いたら答えてくれる程度のモノなら、多分こんなことにはなっていない。
それ程の事だと、俺は思う。
制服を着た女子高生が、高速道路のサービスエリアで、誰かを金で雇って何処かに行こうとしていたなんて......
そんなの明らかに、どうかしているのだ。
そしてそんな彼女が、再び俺に言葉を紡ぐ。
「ねぇ、おじさん......どうすれば早く、オトナになれるのかな?」
「......そんなの、後数年もすればなれるよ」
そう言いながら俺は、彼女の頭を撫でた。
すると彼女は、少しだけ柔らいだ表情で、年相応の表情で、言葉を返す。
「おじさんの手、冷たくて気持ちいい......」
そう言いながら彼女は俺の手を掴んで、それを自分の頬に当てさせる。
「お前、コレ......」
「ごめん......やっぱ、しんどいや......」
そう言いながら、暑がりと言っても明らかに、異常な程に熱い彼女の顔を触って、俺は身体を起こして、携帯電話とカーナビを使って調べながら、隣で横たわる彼女に言う。
「待ってろ、今夜間診療やってる所、探すから......」
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