オトナとコドモ

1/1
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

オトナとコドモ

 仕事を全てやり終えた後、車中泊の準備をする。  夕飯はファミレスで、風呂は銭湯で済ませた後、運転席と助手席を、安眠出来る位の角度に倒す。 「......寒いか?」 「平気。私暑がりだから」 「そっか......」  そう言いながら俺は、なるべく隣には視線を向けない様に気を付ける。  元から何もする気はないけれど、それでも、風呂上がりのJKが隣に居ると思うと、なんだかやっぱり、落ち着かない。 「ねぇ、おじさん」  そんな俺の心境なんかは知る由もない彼女は、俺の方を向いて声を掛ける。 「ん?」  そしてだから俺も、彼女の方に視線を向けて、応答する。 「変態」 「なんでだよ」 「なんとなく」 「......むやみにオトナを傷付けてはいけません」  「それ、なんだか情けないねぇ~」 「しまいにゃ泣くぞ?」 「フフッ、それはそれで見物」 「......」 「ん?どうしたの?」 「いや、最近のコドモは恐ろしいと思ってさぁ~」 「そう?でも最近のオトナだって、それなりに恐ろしいと思うけど?」 「......その心は?」 「......まぁ、経験則かな」  そう言いながら彼女は、俺から視線を外す。  けれどそんな彼女を見ながら、俺は考える。  本来ならもっと早く、もっと真剣に考えなくてはいけなかった事柄を、今更ながら考える。  なんであんな所に、この子は居たのだろうか?  聴いたら答えてくれる程度のモノなら、多分こんなことにはなっていない。  それ程の事だと、俺は思う。  制服を着た女子高生が、高速道路のサービスエリアで、誰かを金で雇って何処かに行こうとしていたなんて......  そんなの明らかに、どうかしているのだ。  そしてそんな彼女が、再び俺に言葉を紡ぐ。 「ねぇ、おじさん......どうすれば早く、オトナになれるのかな?」 「......そんなの、後数年もすればなれるよ」  そう言いながら俺は、彼女の頭を撫でた。  すると彼女は、少しだけ柔らいだ表情で、年相応の表情で、言葉を返す。 「おじさんの手、冷たくて気持ちいい......」  そう言いながら彼女は俺の手を掴んで、それを自分の頬に当てさせる。 「お前、コレ......」 「ごめん......やっぱ、しんどいや......」  そう言いながら、暑がりと言っても明らかに、異常な程に熱い彼女の顔を触って、俺は身体を起こして、携帯電話とカーナビを使って調べながら、隣で横たわる彼女に言う。 「待ってろ、今夜間診療やってる所、探すから......」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!